安田理先生の学校訪問◆ ≪私立中学assist より≫
私は車を降りると決まって深呼吸する。学校から引き上げるときも、もう一度肺にここの空気を入れてから帰る。
都心で仕事している人間にとってはそれほどここの空気はおいしい。文字通り山を切り開いた土地で、周囲はすべて緑。
大学を出て企業に就職すれば、多くの人は私同様都会のビル群での勤務になるだろう。
そう考えると、この環境の6年間は貴重である。
◆突然の「ハッピバースデー」
2017年1月8日、3学期の始業式。校長が挨拶を終えて壇を降りようとしたところ、
「校長先生、そこにいてください!」生徒から声がかかった。
わけがわからず、その場に立っていると、「ハッピバースデーツーユー、ハッピバースデー ツーユー」
生徒全員による合唱が講堂内にこだました。以前、何かの折に自分の誕生日が1月8日であることを話したことを
生徒が覚えていて計画したのだった。しかも全校生徒による合唱。
明治大学付属中野八王子はそんなことが自然に起きる学校である。東京の田舎。この環境が純朴な生徒を育てている。
◆縮まる大学との距離
「2018年問題」といって、18歳人□が減少期に入り、大学進学率も頭打ちになって経営が厳しくなることが視野に入ってきたころから、
大学は付属校を重視しだしている。
下からのパイプを太くする(男子だけだった付属校を共学化し、女子にも門戸を開く、中学校を開校、別の学校法人と系属関係を結ぶ)などで、
乗り切ろうというわけである。
したがって東京の付属校でも近年共学化、開校した中学校が多い。
そうした中、明八は最初から中学があり、共学校たった(厳密には男子部・女子部に分かれていたが)。
明治大学への進学に関しては卒業生307名中247名と80.5%が進んでいる(2017年春)。
国公立、難関私大、そのほか女子で薬・看護系志望者がいるから、
8O%以上ということは日々努力すれば明治大学に進めるということだ。
ここまで高くなったことには明八卒業生の活躍がある。
全国最年少19歳で公認会計士に合格した女性は明八出身の商学部3年生。
彼女は明八在学中から簿記検定講座を受講、在学中に簿記2級を取得している。
一方法学部では、法科大学院を経ない司法試験へのルート、予備試験を受ける講座を選抜した学生に用意しているが、
ここにも付属校の生徒は参加を認められている。実際、明八の在校生も週1回大学生に交じって勉強している。
このように大学における評価が上昇してきたせいで、次年度以降さらに推薦枠が拡大するよう大学と折衝をすすめている。
◆「付属校は英語が弱い」はウソ
ー昔前は、付属校生というと「勉強しない、特に英語が弱い」とよく言われていた。
が、明八では10年以上も前から中3でTOEIC Bridgeを、高校でTOEICを受けさせている。明治大学は社会科学系の学部が多く、
そうした学部では進学後TOEICが必要とされるからである。英検についても中3で70%以上が準2級を取得。
明八に関しては「英語が弱い」なんていうことは全くない。
それどころか、高3では週1回30分のオンライン英会話(フィリピンの講師とマンツーマンで会話)、
高1・高2ではオーストラリアの提携校5校での海外研修も行っている。
ほかの勉強でも、駿台予備校のサテライト講座280講座を高校生は無料で24時間受講できるようになっている。
実際に生徒は、自習室で、自宅で、スクールバスを待つ間に活用している。明八生はしっかり勉強するのである。
◆拝島駅からスクールバス!
冒頭で触れたように環境の素晴らしさの裏返しで駅からは距離がある。八王子駅からスクールバスで約25分。が、このスクールバス、
座席分しか乗車させない。駅から学校までの間、全員が座って勉強できるようになっている。
2018年4月からは拝島からも運行される。拝島なら、西武線、青梅線、八高線すべてが便利になり、通学エリアが格段に拡大する。
◆Grow up in the Forest
素晴らしいスローガンだと思う。「森の中でこそ育つ」文化祭で騒いでもご近所からクレームが来ることはない。
吹奏楽部が音量を控えて演奏をする、といった必要もない。
この環境の中、生徒たちは充実した学校生活を送っている。
私か訪れたときには校舎内に小鳥が迷い込んできた。トンボ、チョウなどは頻繁に入ってくるという。
明八の生徒がのびのびしているのはやはりこの環境が大きいだろう。
森守校長はこう記している。
「笑顔、元気、あいさつ 明八の生徒たちが持っているたくさんの財産が、よりいっそう輝き、
ひとりひとりにとって、明八が人生の拠り所となるよう、私たちはこれからも力を尽くしていきます。」
「森 守」 生徒はまさに優しい森に守られているのである。